古本屋にあった落とし物1

これは知り合いから聞いた話です。その方の目線になって書き綴っていきたいと思います。

近頃、古本屋のバイトを始めました。

最寄駅から数分の古い日本家屋の一階で、平日の昼間から誰も居ない店内で、1人店番をしています。かなり暇な時間を持て余しているので、何かしら日記のようなもので、時間つぶしにならないだろうかと書き始めてみました。

もちろん店内の掃除や、在庫確認など、雑用のような業務はありますが、そのような雑務は、朝、8時に出勤すると、10分程度で完了してしまいます。

在庫確認は、前日に1冊も売れていないのですから、本棚の目視程度で良いと店主に言われています。このような平和な毎日が、永遠と続く日々に、良いバイトであるのかないのか・・・、私には、思考回路さえも「暇」という平和な日常に占領されてしまいました。最寄駅の商店街の中にある店舗なのですが、最近は皆さん、全く「本」に興味がないのでしょうか?

お店の前のワゴンに積まれた「ご自由にお持ち下さい」と書かれた、無料の古本の山々にも立ち止まる人がいません。

店の奥のレジから、店内の入り口のガラス扉を開けっぱなしにしておくと、商店街の賑わいが聞こえてきます。

平日の商店街は、本当に平和そのものです。そんな喧騒を聞きながら、お昼の玄米おにぎりでも、食べようかとバッグを取りに、バックヤードに行って戻ってくると、1人の黒い帽子に黒いコートのおじさんが、店内で立ち読みをしていました。こちらからは、おじさんの顔は見えないのですが、黒いコートがマントのようにも見えるので、メルヘンチックな魔法の国から魔法使いが登場したようにも感じました。本は自由に立ち読みできるので、半日、立ち読みしたり、午前中に立ち読みして、商店街で昼食を取り、午後にまた立ち読みに戻ってくるような人達も時々います。

店内に客人がいても、お昼御飯は好きな時に休憩を取って構わないと、店主から許しを頂いているので、玄米に梅干しと塩をふったのみのおにぎりをバッグから出し、今朝、コンビニで買ってきた味噌汁のインスタントカップにお湯を入れようと、バックヤードに行き戻ってきたら、先ほどの黒マントのおじさんがいなくなっていました。万引きはほとんどないよ、と店主から聞いてはいましたが、気になったので、店内を見回し高価な本の棚を厳重にチェックしてみました。高価な書籍は全て無事でした。

店内は無事でしたので、店の奥のレジに戻ろうとした時、先ほど黒マントのおじさんが居た付近に、いつもはみかけない物体をみつけました。紙袋に入ったギフトのようなものです。紙袋の中にメモ紙が入っていたので取りだしてみると、今日の日付と贈り物のハムという文字が書かれていました。

この包装紙の中身は、贈り物のハムなのかなぁと、少し、包みを揺すってみましたが、何の感触もありません。重さにしても大きさから判断しても、包装紙の中身は「贈り物のハム」のようにも感じますが、残念ながら透視能力がないので伺いしれません。

駅まで行って切符でも買おうとしたら、荷物がない事に気づいたおじさんが、きっと戻ってくるであろうと思い、店の外に出て先ほどの黒マントの人物が見つからないであろうか、駅の方法をしばらくみつめていました。ベビーカーを押しながらツバの広い帽子を被ったお母さんと赤ちゃんや、何を買うのもなく商店街をうろついている高齢のお爺さん、お婆さんばかりが、商店街のアーケード下を行きかうばかりです。

先ほどのような黒マントは目立つはずなので戻ってきたらすぐわかるのですが・・・、見当たりません。

10分ほど店先で、駅の方向をながめながら待っていましたが、一向に黒マントのおじさんが現れないので、レジに戻ってお昼を頂く事にしました。